鳩山由紀夫氏を攻撃するのは誰か
鳩山由紀夫総理大臣が、普天間基地についての対応に対して多くの人びとに批判されている。
しかし、その批判、非難、攻撃は、鳩山由紀夫氏が受けるべき物なのだろうか。
考えて貰いたい。
沖縄を米軍の基地にしたのは誰なのか。
それは、昭和天皇である。
昭和天皇が「沖縄にずっとアメリカ軍に存在して貰いたい」といったのが始まりではないのか。
昭和天皇の沖縄についての発言は、いちいち、私はここで挙げないが,様々な文書で明らかにされている。
もし、私の言葉に疑いを抱く人がいたら、ちょうど良い機会だ、昭和天皇の言行録を、当たって欲しい。ちょっとした図書館に行って、昭和天皇についての書籍を調べれば、すぐに分かることだ。(その意図があるから、私はわざと、文書をここに引用しないのだ。読者諸姉諸兄が自分の目で、昭和天皇が何を言ったのか読んで欲しい。それで、驚かなかったら、おかしい)
昭和天皇が、沖縄をアメリカに渡すと言った言葉に従って、その後の政府は忠実にアメリカに沖縄を自由に使うことを許してきた。
歴代の自民党政府が六十年以上にわたって、アメリカに沖縄を自由に使うことを許してきたのだ。
今まで、日本をアメリカの奴隷にしてきたのは、自民党政権である。
鳩山由紀夫氏に直接の責任はない。
私は、民主党を支持しない。なぜなら、その党員の中に、自民党の最右翼と同じ考えの人間が多く存在しているからだ。
自民党と民主党との絶対的な違いはない。
ただ、鳩山由紀夫氏が、沖縄から米軍基地の移転を表明したことは画期的だった。
我々、日本はいつまでアメリカの奴隷になっていなければならないのか。
その、基本的な疑問に答える一つの回答だった。
しかし、アメリカは強力である。
日本ごとき、ただのアジアの小国、としか思っていない。
少しでも撥ねれば、叩く。
アメリカの有力雑誌、TIMEの、2010年4月19日号(Australia版、多分アメリカ版と同じだと思う)では、「鳩山はfading Japanを改革しようとしているが、彼は、改革より混乱を生み出している」という記事を巻頭に載せた。
この「fading Japan」というのが、実に嫌みだ。fadeとは 「衰え、消え去る」という意味である。「fading Japan」とは、「衰え消え去ろうとしている日本」、と言う意味だ。悪意と、侮蔑を込めた言葉だ。
この、タイトルからTIME誌の意図が明らかだが、(と言うよりアメリカという国の意図)、記事の内容を読んでも単なる嫌みと、脅しでしかない。
こう言う嫌みと脅しは、自民党が政権を握っている限り、絶対に出てこない物だっただろう。
TIMEのいうことは、日本をアメリカの隷属化に置くことが必要だというアメリカ政府、あるいはアメリカの有力勢力の考えを表す物だろう。
この六十年間のことを考えて貰いたい。
長い間、自民党、政府はアメリカに奴隷的に仕えてきたのである。
CIAの秘密文書がアメリカで明らかにしたことは、歴代の日本の自民党の首相がCIAから金を貰っており、CIAにはかれら秘密のコード・ネームが残されていたことだ。
なさけないね。日本の首相が、CIAからコード・ネームを与えられていたなんて。
そう言う国は、まともな独立国ではない。
私は、民主党を支持しないが、鳩山由紀夫氏が少なくとも、アメリカに対して日本人の思いを主張しようとしたことは認める。
しかし、鳩山由紀夫氏がどんなに頑張っても、この1945年以来の日米の関係を突然変えられる訳がない。
変えようといっただけで、私は、鳩山由紀夫氏を評価する。
今までの、自民党政府の誰がそんなことを本気で言ったか。
残念ながら、TIMEが嘲笑したように、日本はアメリカにとって、隷属国家でしかない。
そんな立場にある日本という国の立場を、日本人全体が、日本人全国民がおかしいと思い、それを正そうと思わない限り、日本のアメリカに対する隷属関係は変わらない。
鳩山由紀夫氏を今回の沖縄の基地問題で非難する人間は、戦後の日米の歴史を知らないか無視している。
私から見れば、鳩山由紀夫氏の言うことすら、日本人全体のあり方を考えた場合不十分だと思う。
ところが、その、鳩山由紀夫氏のやわい言葉にさえ、アメリカは厳しく反応するのだ。
この百年間、世界で最悪のテロ活動を続けてきたのがアメリカである。
貿易センタービル2棟が倒されたとアメリカ人は騒ぐが、では中南米で、東南アジアで、中東で、イラクで、アフガニスタンで、アフリカで、いったい何万何十万の人間をアメリカは殺してきたのか。
貿易センタービル2棟で釣り合いの取れる数ではない。
その、テロの基地の一つが、沖縄なのだ。
沖縄の基地から、イラク、アフガニスタン、以前はベトナムに、アメリカ軍が派遣されてきた。
その、テロ基地の一つ沖縄を、縮小することは世界の平和に大きく寄与することである。
だが、力関係は如何ともし難いし、この六十年間の保守政権のアメリカ隷属体制になれたアメリカは、この関係を少しでも変更しようとする勢力に対しては、全力を挙げてつぶしにかかるだろう。
岸信介から、日本政府の売国奴としての体制は変わっていなかったのだ。
A級戦犯だった岸信介が、どうして釈放され、どうして日本の首相になれたのか。
あの、1960年の安保改正の時の騒ぎを考えればよく分かる。
鳩山由紀夫氏は、戦後の首相の中で初めて、アメリカに対して異議申し立てを行った人物である。
私は、政治における陰謀論は簡単に受け入れてはいけないと思うが、戦後の日本におけるアメリカの存在の強さは無視できない。
首相自体が売国奴だったのだ。他にも、いくらでも、アメリカのために国を売る人間がいてもおかしくない。
現実に、名指しは避けるが、アメリカにこびを売るか、アメリカに弱みを握られたか、何らかの理由でアメリカに日本を売り渡す行為を続けて来ている政治家・官僚は、いやと言うほど存在する。
そのような、政治家・官僚と比較すると、鳩山由紀夫氏は少なくともアメリカの奴隷から、この日本という国を解放しようとする意志を持っていると私は思う。
しかし、繰返すが、アメリカは強力であり、日本国内にもアメリカのために働いている人間が多い。
このような状況で、直ちに、沖縄のアメリカ軍基地を縮小しようと言っても、力関係から言って通るはずがない。
通るはずがないことを、公約にした氏を公約違反だと攻めることも可能だろう。
しかし、それは、あまりに戦後の日米関係を無視した意見だと思う。
どんなことであれ、しかも、それが大きなことであれば、最初の第一歩を踏み出すことが一番難しい大事業だ。
1945年以来の対米隷属の日本の立場を、少しでも、良くしようとすることは、難事業中の難事業だ。
それを、公約にしたことの全部が出来ないからと批判すること自体、アメリカのためにする言葉だと思う。
鳩山由紀夫氏が、今回、公約を全て守ることが出来なくても、これは、アメリカに対する隷属関係から自由になる第一歩を日本国民に示した重要な意義があると、私は考えたい。
無闇に、鳩山由紀夫氏を批判する勢力の正体を、国民は知るべきだ。
(その正体は凄いよ。どろどろしているよ。目をふさぎたくなるよ。そう言う人間が、大手を振って跋扈しているのが今の日本なんだよ。)
結局、鳩山由紀夫氏は、アメリカと、アメリカに仕える日本人の有力者たちによって、打ち負かされるだろう。
公約を守れなかったのは鳩山由紀夫氏個人の責任である、と言い立てるのは、そのような人達とそのような人達に盲従する人達だ。
日本政府の実力と、アメリカの実力の差を冷静に計算して、弱肉強食の原理の元に、今回の沖縄の基地問題と鳩山由紀夫氏の責任問題を、感情的にならずに議論するべきだと思う。